確率密度関数と累積分布関数
はい、連続確率変数において、確率密度関数(PDF, Probability Density Function)は累積分布関数(CDF, Cumulative Distribution Function)の導関数(微分)として定義されます。具体的には、 を累積分布関数とすると、確率密度関数 は以下のように定義されます。
逆に言えば、確率密度関数を積分することで累積分布関数が得られます。
このような関係性は、連続確率変数の理論で非常に重要です。累積分布関数は確率変数が特定の値以下になる確率を表し、確率密度関数はその確率分布の「形」を詳細に説明します。このため、連続確率変数を扱う際にはこの2つの関数がしばしば用いられます。
確かに、確率密度関数(PDF)が累積分布関数(CDF)の微分であるという定義だけでは、PDFの直感的な意味は一見分かりづらいかもしれません。しかし、この定義が意味するところを少し深堀りすると、確率密度関数の役割や意味が明らかになります。
連続確率変数の場合、特定の一点での確率は0です。しかし、確率密度関数は、特定の点における「確率の密度」を表します。これは、その点を中心とした微小な区間が与えられたとき、その区間に確率変数の値が落ちる確率を近似的に計算するための値と見ることができます。
例えば、確率密度関数がで、ある小さな区間を考えたとき、この区間に値が落ちる確率はおおよそと考えられます。
このように考えると、確率密度関数は確率変数が取る値に応じて、その近傍の確率がどれくらい「密」なのかを表していると言えます。
なお、この説明はあくまで直感的な理解に過ぎない点に注意が必要です。厳密な扱いには数学的な定義が必要ですが、直感的には確率の「密度」を表していると考えることができます。
確率変数 の関数 の期待値は、その確率変数が取る全ての値に関数 を適用した後、それぞれの値に確率をかけて総和(または積分)を取った値です。数学的には、 の期待値 は以下のように定義されます。
- 離散確率変数の場合:
- 連続確率変数の場合:
ここで は の確率密度関数です。
期待値 の意味は、確率変数 に対して関数 を適用した新しい確率変数 の「平均的な値」を表します。
例えば、確率変数 がサイコロの出目なら、 は例えば「出目の二乗」といった関数になるかもしれません。この場合、 はサイコロの出目を二乗した値の平均という意味になります。
このような考え方は、確率変数に対してさまざまな操作や変換を行い、その結果の期待値(平均値)を知りたい場合に非常に有用です。特に、統計学、機械学習、金融工学など、多くの分野でこの概念が用いられます。
サイコロ(一般的な1面から6面までの数字が書かれた立方体のサイコロ)を投げた場合、各面が出る確率は1/6です。確率変数 をサイコロの出目とすると、この確率変数 の期待値 は以下のように計算できます。
この計算からわかるように、一回のサイコロの投げで出る目の「平均的な値」は3.5です。もちろん、サイコロ自体は整数しか出ませんが、期待値は平均的な値なので、実数となる場合もあります。この例のように3.5という結果は、サイコロを無数に投げたときの平均値が3.5に収束するという意味で理解できます。
上記の「サイコロの目の期待値」の例において、関数 は単位関数()に相当します。これは 自体をそのまま使っているため、特に変換や操作を加えていないのです。
一般的に、確率変数 の期待値 を求める場合は、 として を求めます。このとき、期待値 は と等しくなります。
他の例として、もし ( の二乗)とする場合、サイコロの出目を二乗した値の期待値を求めることになります。このような を用いることで、確率変数 が取りうる値に対する様々な関数の期待値を求めることができます。